疲労回復に効果的なのはシャワー?それとも湯船に入る浴槽入浴?

現代人は、仕事や人間関係などで身体も心も疲れやすい生活や環境に置かれるケースが多く、ときに病気の原因となってしまうことがあります。したがって、健康を維持するためには毎日の生活の中で疲労回復させることが重要となってきます。

疲れを癒す方法はさまざまですが、身近な方法としてはお風呂があげられます。日本にはバスタブにお湯を張り、ゆっくりと湯船につかる習慣があります。しかし、時間がないときや気温が高い夏場などは、湯船に入らずシャワーで済ませてしまうというケースも少なくありません。

清潔な身体を保つためであれば、シャワーだけでも目的は果たせるかもしれませんが、疲労回復を目的とした場合、シャワーでも効果があるのでしょうか。そこで、シャワーのみの場合と湯船に入る浴槽浴の場合を比較したとき、どちらが健康や疲労回復によいのか詳しく解説します。

また、正しい入浴方法やより疲れが取れやすい入浴方法、ダイエット効果が期待できる入浴方法についても一緒にご紹介します。

疲労回復の基本的な流れは身体を温めること

全身を駆け巡っている血液は、取り入れた酸素や栄養を運ぶ大切な器官です。しかし、身体の冷えや運動による疲労物質の発生により、血液の循環が悪くなり、全身に酸素や栄養が供給されないために身体の疲れをもたらすと考えられています。

身体は、睡眠などを代表とする休息によって少しずつ回復するといわれています。ところが、休息が十分でなければ、疲れがしっかりと回復できず、疲労がますます蓄積していってしまいます。

疲労を蓄積させず、効率よく疲れを回復させたいのであれば、全身に酸素や栄養が行き渡らせる必要があります。血液循環をよくし、身体を温める方法としては「温熱療法」が有名です。

赤外線やマイクロ波など、治療にも用いられる物理療法のひとつですが、温熱療法は機器を用いたものだけではありません。身近なお風呂も温熱療法の一種とされており、多くの人が手軽に行うことができます。

疲労回復ならシャワーよりも湯船につかる浴槽入浴

血行を促進し身体を温めてくれるお風呂は、大きく分けると「シャワー浴」と湯船に入る「浴槽入浴」の2つに分けることができます。それぞれに特徴があり、作用が異なるといわれています。

シャワー浴 浴槽入浴
温熱作用
水圧作用
浮力作用

このような結果から、シャワー浴は疲労回復効果が小さく、浴槽入浴の方が疲労回復効果が大きい。

運動とお風呂のいい関係 日々の入浴で健康に:風呂文化研究会
http://www.toshiken.com/bath/series/pdf/vol5/yokuiku05_all.pdf

湯船に入る浴槽入浴の効果

浴槽入浴には、大きく分けると3つの作用があるといわれています。

温熱作用

湯船に入ることで、シャワーよりも身体が芯から温まりやすいため、血行を改善する効果は高いのが特徴です。したがって、疲労回復にも大きく影響を与えると考えられています。

水圧作用

立ったり、座ったりという生活では血液が心臓へ戻りにくく、全血液量の約3分の1が脚に集中した状態といわれています。しかし、入浴することで、湯船に入っている部位には普段の生活ではかからない重さの水圧(水の圧力)がかかります。この水圧には、圧をかけて行うマッサージのような効果があり、水圧によって静脈を圧迫し、血液を心臓へと押し出すポンプアップ効果が期待できます。したがって、血液の循環を促すのにも有効とされています。

浮力作用

水に肩まで入ると、体重が陸上にいるときの約9分の1の重さになるといわれています。普段の生活では全身に重力がかかっていますが、水中では重力から解放されるため、筋肉などの緊張状態もほぐれやすく、リラックス効果が高まることから、疲労回復につながると考えられています。

シャワーの効果

温熱作用や水圧作用がありますが、浴槽入浴と比較すると効果は低いといわれています。しかし、シャワーには一般的な浴槽入浴では難しい「水流作用」があります。水流による刺激は、汚れを落とすのに有効なだけでなく、マッサージにも効果的とされています。

温熱刺激はシャワーよりも浴槽入浴の方が強い

シャワーにも温熱作用はありますが、浴槽入浴の方が疲労回復に有効とされている温熱作用が高いため、疲労回復を目的とするのであれば、浴槽入浴がおすすめです。

浴槽入浴といっても全身浴と半身浴で効果が違う

湯船に入る浴槽入浴は、肩まで疲れるほどのお湯を湯船に入れる「全身浴」と、浴槽につかったときに上半身が出るくらい(浴槽の半分くらいの高さが目安)までお湯を入れる「半身浴」があります。

いずれにも血行促進効果があり、疲労回復に有効とされていますが、目的に合った入浴をすることで、より疲れが取れるといわれています。

全身浴

肩に疲労感があるケースでは全身浴がおすすめです。全身浴の場合、肩まで湯船に入るため、温熱・水圧・浮力の相互作用により効果的に全身の疲労回復と肩の疲れを解消できるといわれています。

ただ、全身浴の場合は、水圧によって全身の血液が一気に心臓へ戻りやすいため、心臓に大きな負担となります。入浴時間は、40℃くらいのお湯に約10分を目安にしましょう。

半身浴

半身浴は、全身浴よりも水圧がかかりにくいため身体への負担が少ないのが特徴です。入浴時間は、38℃から40℃のお湯に20分~30分程度が目安といわれています。

ゆっくりと音楽を聴いたり、本を読んだりするなど、自分の好きな時間を過ごすのにも適しており、高いリラックス効果が得られるのも特徴のひとつです。長時間入浴することで身体が芯から温まるため、血行促進効果も高いといわれています。汗をしっかりかくこともできるので新陳代謝も促進され、ダイエット効果も期待できます。

入浴の温熱効果は湯温が重要

湯船に入る浴槽入浴では、湯温も重要です。人間には、交感神経と副交感神経があり、湯温によって刺激される自律神経が異なり、入浴の効果が変わってくるためです。

入浴法 湯温 入浴の効果 神経の働き
高温浴 42度以上 新陳代謝が促進され、体が活発になる。疲労物質の乳酸を減らして、疲れを取る。 交感神経
中温浴 39~42度 血液循環が改善。体の芯から温まり、副交感神経の動きがもっとも活発になり、精神的に落ち着く。
微温浴 34~39度 筋肉の緊張を解き、精神的に安定する。結構が改善されて、血圧が下がる。 副交感神経

正しい入浴方法と効能:藤本循環器科内科
http://www.sansikai.com/doc/131.pdf

湯温は「高温浴」「中温浴」「微温浴」の3段階

高温浴

疲労物質の乳酸を減らす効果があるとされる高温浴は、42℃以上の湯温とされています。熱いお湯に入ることで、交感神経が刺激され身体が活性化するため、目覚め効果があるといわれています。

疲れが取れるのはもちろん、新陳代謝が促進されて血圧も上昇するため、身体にエンジンがかかりやすく、朝から活発に動けるようになるといわれています。

中温浴

39℃から42℃未満が中温浴とされており、身体を芯から温めて血液の循環を改善するのに効果的な温度とされています。中温浴の場合、リラックス効果が期待できる副交感神経の働きが活発化するといわれており、半身浴に適した温度でもあります。

微温浴

34℃~39℃までのやや低めの湯温は微温浴といわれ、中温浴と同じく副交感神経を刺激するといわれています。心身ともにリラックスでき、筋肉の弛緩や血行の改善が期待できます。また、身体が芯から温められるため湯冷めしにくいという特徴もあります。

疲労回復ならぬるめの「中温浴」か「微温浴」がおすすめ

【熱め:目覚め効果】41~42度程度→交感神経が優位になり、カラダが活性化。

【ぬるめ:リラックス効果】38~40度程度→副交感神経が優位になり、筋肉が弛緩。心身ともにリラックスします。

運動とお風呂のいい関係 日々の入浴で健康に:風呂文化研究会
http://www.toshiken.com/bath/series/pdf/vol5/yokuiku05_all.pdf

日本の家庭では42℃以上の高温浴のケースが多いといわれていますが、疲労回復のためにはリラックス効果の高い副交感神経を優位にする必要があります。したがって、副交感神経が活発になるとされる「中温浴」もしくは「微温浴」の湯温にするのがよいといえるでしょう。

入浴剤で疲労回復効果がアップ

疲労回復効果をより高めたいのであれば、炭酸ガス系の入浴剤を入れた「人工炭酸泉浴」がおすすめです。入浴剤なしのときよりも乳酸値が低下しやすく、血行を促進して疲労の回復をサポートする効果が期待できます。香りつきの入浴剤を選ぶことで、リラックス効果も高まるのもおすすめの理由のひとつです。

意外と知らない正しい入浴方法

何気なく入っているという人も多いお風呂ですが、汚れを落としたり、入浴効果を高めたりするためにも正しい入浴方法を知っておきたいものです。浴槽入浴の基本的な入浴方法は次の5ステップです。

1.かけ湯をする

かけ湯には入浴前に身体に付着した汚れを流す役割だけでなく、体温とお湯のギャップを縮める役割もあります。心臓に近い胴体からかけず、手足からかけるようにしましょう。

2.湯船に入り身体を温める

かけ湯の後、一度湯船に入ります。湯船に入って身体を温めることで、角質や汚れが落ちやすくなるためです。

3.身体を洗う

しっかりと身体が温まったら、浮いた角質や汚れを洗剤で優しく洗い流していきます。かけ湯と同じで、心臓から遠い手足から洗うようにしましょう。

4.再び湯船に入る

身体をきれいにしたら、再度湯船に入って身体を温めましょう。

5.かけ湯をして出る

湯船から出たら、そのまま脱衣所へ向かう人が多いでしょう。しかし、それでは湯冷めしやすいといわれています。湯船から出たら少しぬるめのお湯を足などにかけ、湯冷めを防止しましょう。

快適な入浴のために心がけたい3つのポイント

毎日お風呂タイムを安全で快適に過ごすためも気をつけなければならないポイントが3つあります。

運動直後の入浴は控える

お風呂に入るだけでも10分で約80kcal消費するといわれています。したがって、運動後の体力が消耗しているときに入浴をすると、より疲れてしまう可能性があります。効率よく疲れを落としたいのであれば、身体が落ち着いてから入浴しましょう。

入浴前後に水分補給をする

入浴することで汗をかきます。水分が不足していると脱水症状になるだけでなく、汗が出ないために体温調節がうまくいかなくなったり、血液の濃度が上昇したりする危険があります。特に半身浴の場合は全身浴よりも汗をかきやすい傾向にあるため、入浴前後にはコップ1杯程度の水分をとるようにしましょう。

急激な温度変化を避ける

急激な温度変化によってもたらされる身体への悪影響を「ヒートショック」といいます。冬場の暖房が効いた部屋から寒い脱衣所へ行って服を脱ぎ、冷えた体にお湯をかけるといった行為で起こるといわれています。入浴後に冷房が効いた部屋に行くことで身体が急激に冷えて起こる可能性もあり、夏場でも油断大敵です。

急激な温度変化は、血圧を大きく変動させてしまい、心筋梗塞や脳血管障害などを起こす可能性を高めてしまいます。そうならないためにも、湯気で浴室をあたためたり、心臓から遠い手足から順にかけ湯をしたりして身体とお湯の温度差を縮める工夫をしましょう。

まとめ

忙しいときや夏場は、温熱や水流作用のあるシャワーで済ませてしまいがちですが、温熱・水圧・浮力が相互に作用しあう浴槽入浴の方が疲労回復効果が高いとされています。

しかし、浴槽入浴も全身浴や半身浴、湯温などで疲労回復効果が大きく変わってきます。自分も目的に合った入浴方法を見つけ、安全で快適な入浴で疲れを解消しましょう。

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